令和3年度 伊東市一般会計予算 反対討論

2021年03月18日

令和3年度 伊東市議会3月定例会

令和3年度 伊東市一般会計について 反対の立場で討論

 令和3年度、伊東市の一般会計当初予算は「伊東らしいニューノーマルの形を模索する」という方針と共に掲げられた予算編成でした。昨年から続く新型コロナウィルス感染症の影響により、観光・商工業を生業とする伊東市は大きな打撃を受け続けていて、いまだその脅威に収束は見えません。
疲弊しきった市内経済への救済策、市民生活の安全を担保する為の医療体制の強化など、長く続く新型コロナウィルス感染症の影響に対する早急な対応策に加え、将来の急激な人口減少から予想される税収の減少やそれに向けての維持コストを抑えた機能性の高いコンパクトな町づくり、少子化に伴い統廃合される学校の教育問題、高齢化社会の加速に追いつかなくなる福祉をどうするかなど、厳しくなる将来に向けての取り組みもまったなしの状況で、まさに令和3年度は伊東市政の正念場であると言えます。

令和3年度 伊東市各会計予算案公表資料 ← 伊東市の令和3年度予算はこのような編成です

今、市民にとって最も必要なものとは何か。

 新型コロナウィルス感染症のような世界規模の未曾有の危機に直面し、社会の根幹を揺るがすような現状の中、私たちの暮らす伊東市で、今、市民が最も必要とするものは何でしょうか。
それは、あたりまえの日常を大切な人たちと分かち合えること、つまり「市民生活の安全と安心」だと考えます。

 令和3年度 伊東市の当初予算をそのような視点から顧みれば、市民生活の安全と安心を担保する為に必要不可欠な医療体制の強化、地域の医療施設への支援や連携への取り組みや市内医療の中心的役割を果たす伊東市民病院の体制強化などに費やす予算は盛り込まれておらず、即効性のある経済支援策や観光商工業への底上げなど、速やかに行われる必要のある事業よりも、以前からの内容を引き続き行う事業に比重が重く置かれています。
大型のいわゆるハコモノ事業(市民運動場人工芝生化事業、新図書館建設、文化ホール建設)も復活し、推し進められていく予定です。
全体を通して見ても「今まで通りの市政運営に戻った」という印象しかありません。

これでは、多くの市民が求めるものから乖離(かいり)していると言えるのではないでしょうか。


市民運動場人工芝生化事業完成予想図
●市民が安全安心にスポーツに取り組む環境作りの一環として市民運動場の人工芝生化を実施。
【令和3年度予算 教育費より 7億5百万円】

運動場も図書館も新しくて素晴らしい施設がいいのはもちろんです。ですが、
建設をしようとしているその施設。本当に将来の負担にならない計画ですか?

 令和3年度は新型コロナウィルス感染症の影響を受け、市の財政も非常に苦しい状況でしたが、蓋を開けてみれば国からの地方特例交付金など国庫から入った歳入が6.7%増え、市税全体では収入は9.3%の減少見込みに留まりました。当初予算の規模は前年に比べて0.8%減少の272億7千万円です。 

市の予算の中で、必要経費にあたるものを「義務的経費」といいます。
義務的経費とは、主に人件費扶助費(社会保障制度で生活困窮者、高齢者、児童、心身障がい者等に対して行う支援の経費)、公債費(市が借り入れた市債の返済に使う費用)の3つを指します。令和3年度の伊東市の義務的経費は、扶助費は増加したものの定年退職者が減り退職手当が減少した為に全体では1.3%減に留まり約129億5千万円でした。

義務的経費に対して、社会資本の整備などに要する経費を投資的経費といいますが、その中でも、道路や橋、学校や公園、公共施設の新設や改修・整備など公共の建設事業に要する経費を普通建設事業費といいます。従来の考え方では、市民が必要とする社会基盤整備を着実に実施していくために、普通建設事業費は「一定の水準で予算をかけていくことが必要である」と言われ続けてきました。

「一定の水準で予算をかけていくことが必要」であることは、施設の老朽化などを考えれば確かにそうですが、高度成長期のような右肩上がりの人口増、右肩上がりの経済成長が見込めなくなった現在、かけていく予算の中身が問われています。

 市では公共施設の建設や大きな改修を行う際には 市債(しさい)を建て、建設事業の財源を長期の借り入れで調達します。市債はいわゆる大きな予算の分割払いの金額です。
公共施設は長期間、多世代に渡って使用するものです。そのため、世代間で公平に負担をする、という観点から市債を立てて長期の分割払いにすることが必要、とされています。

以上を踏まえて大きな問題点は主に2つあります。

 毎年の市債の支払額(=公債費)は、ある程度一定額になるように調整されています(イメージとしては借り入れ残高が増えても、毎月の支払額は一定のリボ払いに近い)ですが、「維持管理費」は、それぞれの予算の中に毎年計上され、紛れ込んでしまう為に見落とされがちです。
総じて自治体も議員も、建設や改修時の市債の額や公債費に対しては注意を払いますが、維持管理費や運営費に関しての議論があまり上がりません。

 市民運動場の維持管理費は現在年間550万円ほどです。人工芝のグランドに改修された後、年間維持費がどれくらいになるのか、いくら増額になるのか、現状ではっきりした試算が存在していません。このまま事業が進んでいけば、年間どの程度の維持費がかかるのかはっきりしないないまま市民運動場は人口芝生化してしまいます。(予算大綱質疑にて質疑)
人口芝に改修された後は 毎年の市債の支払い + 維持管理・運営費、更には約20年後に予定する張り替えなどの修繕費用 が将来に渡って、施設が廃止されるまでかかります。

維持管理費や運営費の試算が無いままでは、市民運動場に対する市民の将来負担の見通しは不透明なままです。本当にこのような状態のまま建設を進めてしまっていいのでしょうか?

いわゆる箱モノ施設の維持管理費が増えていけば、必要経費が予算を圧迫し「自由に使えるお金」がどんどん減ってしまいます。家計簿でいうところの「台所事情が厳しい」状況と同じような状態です。
箱モノ事業の落とし穴は、実はここにあります。

財政危機の実感が無いまま、気がついた時には財政がひっ迫して身動きが取れなくなるということは、他の地方自治体の例を見ても実はあまり珍しいことではないのです。

 一般質問でも取り上げましたが、伊東市は現在、418棟もの公共施設を所有していて、そのうちの約79%にあたる330棟もの施設が老朽化しています。すべての施設の統廃合や改修を視野に計画的に財政を運用していかなければ、この先の将来、老朽化していく公共施設が大きな負の遺産となって市の財政を圧迫しかねません。

ですがその為の「公共施設の総合管理計画」はまだ作成中で、具体的な計画が決まっていないのです。

今ある418棟もの施設をどう維持し、どれを廃止し、何を新しくしていくのか。
それが町づくりの中で総合的に計画されていない現状で、公共事業に次々に取りかかる令和3年度の予算に対しては不安しかありません。

総合的な管理計画をまずしっかりと策定して試算をし、優先順位を決めてから公共施設の新設や改修、廃止を進めるべきではないでしょうか。

2点めの問題。
毎年の支払いが一定でも人口が減ればどうなるでしょうか?
人口が減れば税収が減ります。単純に市民ひとりあたりの負担はどんどん大きくなっていきます。
収入が減っているのに、リボ払いの支払い金額が変わらなければどうなるか。私たちの家計に照らし合わせてもそれは明白です。
そして更に、人口が減り続ければ市の税収も増収は見込むことは難しく、ますます追い打ちがかかります。予算の規模も小さくなっていくでしょう。その時に、既にある箱モノ施設の維持管理費や運営費をどれくらい削減することが出来るでしょうか。

維持費は削ればいいというものではなく、手入れが悪ければ老朽化も進みます。
将来の人口減少のペースに併せて、今から公共施設の規模はどんどんコンパクトにしていくのが近年の方向性ですが、伊東市はそれに逆行するかのような施策を取っています。公共施設の規模も、コストも、一向に削減される気配がなく膨らむ一方です。
市民運動場、新図書館、現在計画のある大型の箱モノ事業が、将来の世代の重い負担になることがないように綿密な計画と試算が求められています。施設を単体で考えるのではなく、総合的に計画していくことがこれからの将来に向かって重要です。




コロナ禍で揺らぐ社会。今、本当に優先すべき事業とはいったい何なのか。

 
 令和3年度、伊東市が予定している投資的な予算としては【市民運動場人工芝生化事業 約7億円】【新図書館建設事業 基本設計委託料 約5千万円】【コミュニティFM放送局設備整備事業 約1億2千万】などがあります。
そのなかでも、市民運動場人工芝生化事業は、
昨年「市民の安全と生活を守る対策等を優先すべきと考え、延期とする」ということで延期になり、今回、再度復活して建設が予定される事業です。

果たして、優先すべきとされた市民の安全と生活を守るという責務は、現在どの程度達成されているのでしょうか。

これらの事業を、この有事の事態の下でも行う理由とは何なのか。
優先すべき市民の安全と生活を守る対応策はどの程度実行されたのか。
それを市民のみなさんにわかりやすい形で示して、多くの市民の理解と賛同を得ることが重要だと考えます。みなさんはこの2つの大型事業を今、このような形で進めていくことに
ついてどのように考えますか?


今が平時ではなく有事であることを肝に銘じて、有事にこそやらなければいけない事をまず最優先しなければなりません。




伊東市の将来、このままで本当に大丈夫??


 コロナ禍の状況からの立ち上がりが未だ見えない状況下、いままで通りの行財政運営で本当によいのでしょうか?

 新しい社会の始まりを受け入れて果敢に挑む民の動きに対して、官の動きは伊東市に限らず緩慢です。新型コロナウィルス感染症の脅威が猛烈なスピードで更新されていく中、発想を転換できず、結局は従来通りの政策を繰り返すことしか出来ないことで、官と民の考え方や感覚は大きく開いていくばかりに見えます。

危機は、大きく社会のあり方が変わる局面でもあります。逆に、この今の危機的状況で変わることが出来なければ、いったいいつ変わることが出来るのか。そういう視点から見れば、令和3年度の当初予算の編成や議会運営は、伊東市にとって大きな変革の機会でもありました。

しかし残念ながら、令和3年度の予算はいままで通りの市政・財政運営が繰り返されているという印象を拭えませんでした。

市民に今、一番必要とされているはずの「市民生活の安全・安心」
その為に今、するべきこと、出来ることは何なのか。
伊東市がリーダーシップを発揮し、これからの市民生活にとって何が本当に必要なのか、社会をどう変えていくべきなのか。大きく困難な問題についてもっと市民と共に考え、最善を模索していくことを切望して、私は令和3年度 伊東市一般会計予算に反対をいたしました。

予算は、私を含めて反対議員3名(重岡秀子議員、佐藤龍彦議員)、賛成する議員17名の賛成多数で可決となりました。ですが
当初の予算が決まっても、その後の市政に変化が起きないというわけではありません。

行政の予算は、骨組みとなる当初の予算に補正が繰り返されて進んでいくものです。
現に令和2年度は、一度予算で可決されて計上した市民運動場人工芝化事業をはじめ多くの事業が延期され、予算が組み替えられましたし、その後何度も補正が繰り返されました。

これからの伊東市に大切なことは、出来るだけ多くの市民が市政や財政に関心を持ち、自分たちが収めている税金の使い道、市政や財政運用の在り方について行政任せ、議員任せにするのではなく、自分たちで考え、声を上げて「市政を市民の手で動かしていくこと」だと思います。

令和3年も未だ引き続き苦しい状況が続いていますが、私の投じた反対が、よりよい私たちの地域のあり方を市民みんなが考える、その為の切っ掛けとなることに期待しています。

今回の討論では、反対の立場で2名、賛成の立場で3名の議員が壇上に上がりました。
YouTubeで配信されていますので、是非、すべての議員の討論を視聴していただいて、みなさんにも一緒に考えていただきたいと思います。